今更ながら、住野よるさんの「君の膵臓をたべたい」を読みました。
最近、死と生にまつわる話を多く読んでいる気がする。
ストーリー自体はよくある病気もので、お涙頂戴と言ってしまえば、終わりです。
が、しかし、私がこの小説が好きなのは、それだけでない魅力を感じたからです。
実写映画化、アニメ映画化されるんですから、他の方も同じようにお涙頂戴以外に魅了されているのだと思います。
彼女が彼に名前がぴったりと言われて嬉しかった理由
私が、この小説で一番グッときたのは、主人公「僕」がヒロイン「桜良」の名前を君にぴったりの名前だと話すシーンです。
主人公はヒロインのことを一貫して君としか呼びません。
照れ隠しなのか、たまたまのなのか。
自分の名前を呼ばれないヒロインは、「僕」が自分のことを嫌っているのではないかと推測します。
同時に「僕」が人が抱いている感情を予測するクセがある事から、ヒロインに「僕」を定義されたくない、ヒロインを「誰か」に定義したくないのではないかとも、推測します。
正解は後者である事が、「僕」が墓前に梅酒をお供えした事からもわかります。
「僕」が彼女を名前で呼ばない理由に私は深く共感しました。
なぜなら、私も「名前」=「その人の役割」と認識しているところがあるからです。
友人のA、知り合いのBなど、人の名前と、その人と自分の関係は深くリンクしていると私は思っているのです。
私にとって、人の名前を呼ぶという行為はその人の役割、自分が相手に抱く感情を表すことだと考えています。
同じAという名前を呼ぶにしても、「Aさん」と呼ぶのか、「A君」と呼ぶのか、「A」と呼び捨てにするのか。
自分が相手に抱く感情を表す、逆に言えば定義していない人、定義したくない時は名前を出しません。
具体的には悪口、陰口をいう時、全くの初対面の人と話すときに、抵抗を感じるのです。
話を小説に戻します。
人を名前で定義している人間が彼女の名前をピッタリだと、好意的に話します。
そのシーンを、彼女の死後、共病文庫を読むときにがっちり伏線回収してくれるのです。
「僕」は彼が彼女に名前がピッタリと言ったときに喜んだ時に、不思議そうでしたが、もう、私の頭の中ではスパーク散っていましたよ。
「あぁ、そうか、だからか。
だから、彼女は名前を…」
と一人悶絶しました。
そして、彼が名前を呼ばない理由までも察していた彼女が、すでに故人となってしまった事が残念でした。
「死」を頻繁に話題に出す彼女
死さえも冗談の一部に利用する彼女の感性は、自分の寿命を残酷にも認識しているからでしょう。
寿命というよりは死でしょうか。
死ぬことが生活の一部になっているから冗談を口に出す。
私たちの会話も、普段の生活に根ざしたものです。
家族の中でしか伝わらない話題だったり、友達同士でしか伝わらない言葉だったり。
私たちは、生活に根ざした、身近なことを話題にします。
彼女にとって死は身近で、生活に根ざしている。
だから、頻繁に口に出すのでしょう。
または、彼女が「日常」と「現実」を与えてくれると評する「僕」だからこそ、死への不安を冗談にしているのでしょうか。
「人はいつか死ぬ」
私たちも一緒なんだけど、私たちはそれを認識しません。
認識しないというより、認識できないのでしょう。
毎日、死を考えていたら物事が前に進まないから。
まだ、死が遠くにあって自分に関係のないものだと信じているから、私たちは死について話題に出すことは少ないのです。
本音を見せない会話が好き
この作品の魅力は何と言っても二人の掛け合いですね
読んでいて面白いです。
こういう掛け合いが好きだな。
あんまり乗ってくれる人は少ないけど、お互いの言葉を借りて会話する感じがいいのよね。
自分の本音を相手の言葉で返す会話、最高じゃん。
読むきっかけとなったのは、主人公に似ていると言われたから
ここからはただの日記。
主人公に似ていると言われたからこの本を読んでみました。
聞いたことのある本の主人公に似ているのだから、そのときは素直に喜んだのですが、小説を読んでみたら、うーん、どうだろう。喜んでいいのだろうか。
自分を強く持っているとは思うが、そうか、俺の話し方とか雰囲気ってこんな感じなんかな。
心当たりがあるだけに強く否定もできないけど、ここまで人間関係に疎くないよ。
人の評価は人の中にあるから分からんし、変えづらいからね。
まとめ:ありきたりな病気ものの小説で片付けるのは勿体無い
彼女と「僕」の日常パートが幸せすぎて、彼女の死後、共病文庫を読むシーンは泣けますね。
正直なところ、本を読むまでは「ありきたりなお涙頂戴小説」と思っていました。
しかし、実際に読んでみるとそれ以上の魅力がありました。
私と同じように「お涙頂戴小説」で片付けている方の方が意外にハマると思います。
ぜひ、原作を読んでみてはいかがでしょうか。
アニメも観ました。原作好きなら、観に行って損はないかと。
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