【読書感想文:ネタバレ】恋する寄生虫/三秋縋を読んで

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ネタバレありです。

朝食前に一気に読んでしまいました。

面白いお話でした。

寄生虫というぐらいだからグロテスクな内容なのかと不安でしたが、グロくはないです。

どうしようもない人間同士の純愛のお話。

こういう物語は好きですね。

感想文というより、気になった部分の書き出しになった感じもします。

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寄生虫に操られて、恋をする物語

この物語をまとめるとこれだけの文章になります。

味気がありませか?でも、最後のヒロインの選択にあなたはきっと引き込まれるはずです。

恋する寄生虫のあらすじをまとめると以下のようになります。

うだつの上がらない主人公が突拍子も無い提案(脅迫?)から少女と過ごす。
次第に互いに惹かれ合う二人。
でも、それは寄生虫によってもたらされたものだった

主人公は重度の潔癖症、ヒロインは視線恐怖症です。

どちらも社会不適合者と自分を認識していて、生き辛さを感じていますがお互いの事だけは遠ざけず、やがて恋心を抱きます。

この人しかいない!と思った相手がもしも自分の意思で選んだ人で無かったら?

私たちが知らないだけで、そんな恋もあるかもしれない。

ヒロインの血液を残そうとする主人公

3章で潔癖症の主人公が初めてヒロインに触れられ、ヒロインの頬を切ってまうシーンがあります。

潔癖症の彼ならすぐに血液を拭き取りそうなものですが、彼は彼女の血液を記念だと言って残そうとします。

なかなかに変態的な彼の行動ですが、主人公は虫に操られていることを示唆してるのかなーと思いました。

虫に寄生された人間は同じ虫に寄生された人間を愛するようになっています。

だから、主人公は同じ虫に寄生しているヒロインの血液を潔癖症なのにも関わらず、残そうとしたのかもしれません。

潔癖症でなくても他人の血液を自分の部屋に残そうとする行為は常軌を逸していますよね。

人との関わりを避け続けた彼が、彼の意思で他人の血液が自分の部屋にあることを許すでしょうか?

最後のヒロインの選択は共感できるが理解はできない

この作品で最後にヒロインは死にます。

明確な死は描かれませんが、このヒロインは幸せの絶頂で死にたいという欲望には抗えないでしょう。

死にかけて、生き残って最愛の人と暮らしているのに、死を選択するヒロインには共感でき、理解できないというのが私の本音です。

幸せの絶頂で最後を迎えたいと言う理想は共感できる

そもそも彼女は自分の生きている世界に対して諦めを持っています。

虫に寄生された影響だけでなく、生き辛さを最初から持っていたのだと思います。

世界への諦めを覆す愛し、愛される人が存在したところで彼女の世界は完結しているでしょう。

私は今幸せの絶頂にいる、これ以上の幸せを感じることが無い。

もしくは、これ以上の幸せを築けないと悟った時、そう感じた時に人は死を選ぶのかもしれません。

これから先の人生が明るく輝き続ける保証はない

絶望だけが死(自殺)の動機では無いのだと思います。

彼女の抱えている生きづらさから解放した、彼に愛されているという幸せを手に入れた事が彼女の世界を終わらせたキッカケなのかもしれません。

でも、私は彼女の選択を理解できません。

理解したくないと感情があります。

物語の中盤、視線恐怖症の彼女は視線に慣れるチャンスだと言って、図書館をヘッドホン無しで過ごそうとします。

この社会に適応するための努力を彼女の意思で行なっています。

それでも彼女は最後に死を選んだ

それが虫の感情操作によるものではない、彼女の意思だったとしたら、なぜ社会に適応しようと努力をしたのか。

どちらが彼女の意思で虫の意思なのか、そんなことを考えると彼女の選択を理解できなくなるのです。

苦悩を処理してくれる虫がいなくなり、彼女の感情がキャパオーバーしたせいなのかもしれないとは思うが、生きて欲しかったなとも思う。

彼女の幸せの選択が私とは違ったというだけなんだけど、モヤっとする。

何かを持っていなければ、自分にはそれが一生手に入らないのではないかと恐ろしくなった。

何かを持っていれば、いずれ自分はそれを失ってしまうのではないかと恐ろしくなった。

結局は彼女の思考はここに根付いているのだと強く感じました。

彼女は手にした幸せを握って死にたいのだ。

それが彼女の言う勝ち逃げなのだろう。

でも、私は彼女に「勝ち」を維持し続けて欲しかったし、恐らく多くの人が抱く感情だと思います。

それくらいに彼女は魅力的だし、これからがある!と思ってしまいます。

今ある幸せを、もっと幸福にして欲しかった。

これからの生活がマイナスに傾くかもしれないなんて考えて欲しくない。

だから、私は彼女の考え方に理解できても共感はできないのだと思います。

どこにでも、誰にでもある感情は寄生虫か

誰もが一度は抱えていた苦悩を寄生虫という具体的なものに置き換えられているからわかりやすいです。

現実には虫のせいでは無く、自分の心の整理の問題ですが、言い表せない感情の原因が虫であると言われる世界はもしかすると気が楽なのかもと思いました。

なぜ、こんな些細なことで悩んでいるのか、虫のせいで完結するのはとてもシンプルです。

しかし、虫が処理していたはずの感情の置き場を失った時、私たちはどういう行動を取るのでしょうか。

寄生虫が悩みを肩代わりする世界は楽かもしれないけれど、私たちは自分で感情を噛み砕いて、消化していくしかないから仕方がない。

追記:漫画版も出ました

2018年に小説だけでなく、漫画も発売されました。

小説ファンのみならず、漫画好きにも読んで欲しいですね!

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